前略
極端な話、国歌だって歌詞の意味なんか知らないまま歌ってたじゃないですか!
の館長です。
◆
「千代に八千代に」だの「さざれ石」だの「巌」だの「苔のむす」だの、子供のときは知らんかった!(けっこう大人になるまで知らんかった!)
でも歌ってた。 それでも歌い継がれていく。知らんままでも歌い継がれていく。
歌詞の意味が伝わらなくなったっていいんだ。
後の世で伝わらなくなることを恐れて、いま使いたい歌詞を我慢するこたぁないんだ。
今の世の中を反映するような歌詞をどんどん書けばいい。そしてどんどん死語になれ。
後世の者たちは、その屍を越えてゆけ!
……とは言うものの、先日聴いた好きな歌手の歌詞に「既読スルー」とか「断捨離」といった言葉が出てきて、ちょっと戸惑いました。
自分の好きな歌なら、できることなら未来永劫みんなに愛されてほしいんですが、「既読スルー」「断捨離」って、何十年か先でも生きた言葉でいてくれるのかな?
そんなことを考えていたら、前に『月曜から夜ふかし』でやっていた「意味が伝わらなくなったヒット曲たち」を思い出したので、改めて見てみました。
『A面で恋をして』の「A面」が伝わらない。
正直な話、シングルレコードのB面なんてほとんど聴かなかったんですよ、僕は。
結局、A面のついででしかなかったんです。
バンドのレコードなんかだと、A面はちゃんとヒットメーカーであるメンバーが書いているのに対して、B面は他のメンバーが力試しに書いてるような曲で、言っちゃ悪いけどほとんどは面白くなかった。
だからB面なんて無くして、そのぶんレコード代を安くしてほしい! なんて思ってたものです。失礼な話ですが。
A面・B面という呼称にダサさを感じたのか知らないですけど、「SIDE-A」「SIDE-B」なんて、ちょっとカッチョよく表記されることも増えていたように思います。
そんななか、聖子ちゃんの『天国のキッス』のB面は、「片面」。
「片面」――
「もう片っぽはこれだよ!」って言ってるような、ちょっと投げやりな感じさえする「片面」。
レコードからCDになると、裏面は使わなくなったので、B面を表す言葉は「c/w」という表記になったりもしました。
「c/w(シー・ダブリュー)」は、すなわち「coupling with」の略。
それまで「CW」といえば C.W.ニコルさんしか知らなかったけど、おかげさまで一つ賢くなれました。
『恋におちて』の「ダイヤル」が伝わらない。
電話から「ダイヤル」が無くなりボタン式になった「プッシュホン」の登場が1969年。(思ってた以上に古くて驚き)
小林明子の『恋におちて』の発売が1985年。
歌のころにはすでに「ダイヤル回して……」が常態でない人も多かったと思いますが、それでも「ダイヤル回して」いた経験のある人ばかりがこの曲を聴いていたので、違和感は少なかったでしょう。
でも今はダイヤルを回したことのない人のほうが多いかもしれません。
ダイヤルを回す音は、こんなでした。
では、この「ダイヤルを回す音」を表す擬音語は何でしょう?
これまた知ってる人は少なくなったかなぁ?
ジーコ ジーコ
と言うのです。
黒電話を「ジーコジーコ」回せるカプセルトイ あの感触と音を再現
ジーコジーコとダイヤルを回すケータイが発売!
「ジーコ」といえば、あのサッカーのジーコしか知らなかったけど、おかげさまで一つ賢くなれました。
番組では、『涙のリクエスト』の「トランジスタ」が伝わらない、と。
僕にしてみれば、思い出深いRCサクセションの名曲『トランジスタ・ラジオ』そのものもあるから、伝わらないなんて悲しいこと言ってほしくないんだけど……しょうがないか。
「遂に登場!」したんだぜ、当時は。(笑)
さらに、この『涙のリクエスト』には、前述した「ダイヤル」も出てきます。
おまけに、この「ロケット」も伝わらないとか。
「オレの送った銀のロケット」と聞いて、
「すげー! ロケットを恋人に贈るなんて超金持ち!」
みたいに思う人もいるようです。
あのロケットを贈るなんて、そんなヤツおらへんやろ。
佃製作所の社長かよっ!(いや社長だって贈らん)
この曲で言うところの「ロケット」は「locket」のことで、空を飛ばす「ロケット」は「rocket」だ。
「R」と「L」を間違えるなよ! とさんざん英語教師に言われたじゃないか。
「rice(米)」は食べても「lice(シラミ)」は食わんだろ。
まぁ、正直なところ僕にとっては「ロケット」が伝わるか伝わらないかはどうでもいいんです。
そんなことより、
元カレの送ったロケットに、今カレの写真を入れる女がいるとしたら、その無神経さをどうにかしてくれ!
僕とて、ちょっと自己主張の強い彼女に、彼女自身の写真を入れたロケットをもらったことはある。(少し困った)
その後、別れたからって、そのロケットに新しい彼女の写真を入れようなんて微塵も思わなかったわさ。
いや、歌詞を見るかぎり、主人公であるオレ(フラれたほう)が、
「オレの送ったロケットには今ごろヤツの写真入れてるんだろ」
と、妄想しているだけという可能性もある。
むしろその可能性のほうが高いかな?
だとしたら、そりゃフラれるわ。
想像力の欠如は、思いやりの欠如だ。
◆
ともあれ、この曲には結果的に意味が伝わりにくくなってしまった言葉がいくつも出来たり、歌詞に納得いかない部分もありますが、曲として大好きです。
初めて聴いたときの情景は今でも思い出せます。(それこそトランジスタラジオで聴いたでー)
『リフレインが叫んでる』の「カセット」が伝わらない。
これに関しては、放送当時はそうだったかもしれないですけど、その後ちょっとしたカセットブームが来て、今でもわりと根強い人気は保っているようです。
音楽といえば配信が主流となっている昨今、カセットテープに再び注目が集まっているという。それに伴いインテリアとしてもカッコいい、ラジカセも売れている。最新機能を搭載して復活したラジカセもあり、見逃せない。
したがって、『リフレインが叫んでる』はまだまだいける!!
これ、よくやったなぁ~。
六角形の鉛筆じゃなきゃダメなんだよね~。
昔、ある歌手がテレビで、
「さあ、これからブラウン管からお茶の間に飛び出していきますからね! ちゃぶ台の上、片付けといてくださいよ~」
――なんてことを言ってましたが、「お茶の間」「ちゃぶ台」含めて、このセリフが全然通じなくなる日が来るんでしょうか??
レコードをかけたことがない人には「針がおりる」もワケ分からんかもしれません。
「注射をされる」ことだと思ってしまう恐れも無きにしもあらず。
この歌はいいっすよ! スゴくいい!
当時から大好きな歌で、高田みづえの中では『私はピアノ』とか『私はひちりき』とかよりずっと好きでした。
でも……
当時からこの「バイビー」には危うさを感じていました。
こんな一過性の流行りのご挨拶を歌詞に入れていいのかなぁ? と。
曲もいいし詞もいいのに「バイビー」だけ浮いてるように感じられたのです。
「バイビー」とは、80年代、特にバブル時代に若者を中心に使われていた、「バイバイ」「さよなら」を意味する言葉です。 ちょっとおどけた感じに、元気よく言うのが基本の使い方。 今の20代からしたら「ドラマで聞いたことがある」くらいの認知で完全に死語なので、冗談で言ったつもりでも、周りはポカーンとしてしまうので、同世代との会話意外では極力使わないようにしましょう!
類似語に「バイなら」もあり。
なんか、耳が痛いっす。
僕なんか「バイなら」も盛んに使ってた……。
今となっては、「バイビー」も含めてこの曲が好きになれたので、僕の中では落着しました。
ですが、もし若者の前でこの歌を流したり歌ったりすることがあるとして、
「バイビーって何なの~! ウケるんですけどぉぉ~! 爆笑」
みたいになるのはイヤだなぁ、とは思うわけです。好きな曲だからこそ。
ペナントだらけのあなたの部屋に……。
確かに昔は、部屋じゅうにペナント飾ってる友だちもいたもんです。
羨ましいとは思わなかったな。羨ましそうにしてあげたけど。
いま思えば、友だちにとってのペナントの意義は、「収集」より「誇示」だったんでしょうね。
ペナントだらけの彼氏の部屋に行ったら、おそらくあちこち行った自慢をされると思うけど、会話が無いよりはマシかな?
「これからはキミと一緒に行ったところのペナントを増やすのが夢なんだ!」
なんて、熱く語られたりしても困る。
そんな熱いファンのいたペナントなのに、なぜ姿を消してしまったのか……?
NHK『チコちゃんに叱られる!』で、その理由について説明していました。
- 「もらうと困るお土産」というイメージがついたから
- 家の壁が土壁からクロスに変わったから
◆
永遠に廃れない言葉のみで歌詞を作るっていうのは難しくもあるでしょうし、第一、けっこうつまらない歌詞になりそうです。
古来、「歌は世につれ世は歌につれ」などとも申します。
今はもう使われていない言葉を、何かの歌の歌詞に見つけたら、それはその時代の世の中に思いを馳せるいい機会です。きっと。たぶん。
そんな感じで。
んじゃ、バイビー!!
いや、
バイなら~!!
ちなみに「バイなら」の生みの親は斎藤清六だよ(明日使える豆知識)
プロフィール
館長と申します。
ホッピーを飲みながら猫をモフっているときが至福の時だと思いますがそういう状況になったことがありません。世知辛い世の中ですね。
こまかい話は下記に。
自己紹介
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