前略
僕もいっぱしの「ヒルズ族」と言っていいでしょう!
の館長です。
◆
六本木ヒルズに勤めている人。
六本木ヒルズに住んでいる人。
そして…… 六本木ヒルズに6時間半いた人。
これらまとめて「ヒルズ族」と言ってもいいですよね?
異論だらけでしょうけど……いいですよね?
『ブラック・ジャック』はとにかく読んだ
僕は漫画をあまり読まないまま生まれ、読まないまま育ちました。
読んで生まれたという人を知りませんが……。
まともに全話を読み通した記憶のあるのは、『ベルサイユのばら』、『キャンディ・キャンディ』、そして『ブラック・ジャック』くらいでしょうか。
『ブラック・ジャック』は読んだ。読み込んだ。
猛烈に感化された僕は、
「いつか自分も、どこに出しても恥ずかしくない立派な無免許医になるんだ!」
と一瞬思ったけど、あとになっていろいろと間違ってることに気づきました。いや最初から気づけよ。
そんな『ブラック・ジャック』の連載開始50周年を記念した大型展覧会、「手塚治虫 ブラック・ジャック展」が開催されたので、漫画を読まないまま生まれたくせに、のこのこと行ってきました。
手塚治虫 ブラック・ジャック展を観に、一生無縁と思ってた「六本木ヒルズ」へ
駅の通路でも大きな看板でアピール。
会場は、六本木ヒルズ森タワー52階の「東京シティビュー」という展望フロア。
「六本木ヒルズ方面」なんて、僕には一生縁がないと思ってたのに……。
この字面だけで緊張してくる。
エスカレーター自体がかなりエスカレートしてるじゃないか!
来た! 六本木ヒルズ森タワー。
なんかいた!
好きだよねぇ、こういうの。 こういうところの人たち。(偏見)
僕はかまわず歩いていく。
ヒルズ族には用はないんだ。(向こうも僕には用はない!)
予約時間まではまだ余裕があったので、オシャレな人たちが一息ついているエリアの隅っこのほうで、持参したおにぎり(バッグの中でつぶれた)とお茶をいただいた。
驚いたのは、ドラマや雑誌で見るように、オシャレな人たちは本当にただのサラダなんかを食べているんだ、こんなところで。
こちとら、ひしゃげたおにぎりだぞ!
まぁ、いい。 今日は君たちのようなオシャレさんに用はないんだ。(向こうもない)
(このとき恥を忍んでここでひしゃげたおにぎりを食べておいたのは本当に正解だった。さもなくば飢え死にの危機を迎えていただろう……)
会場へのエントランス。
僕は予約時間を12時で希望した。 自分にしては早いほうだ。
なぜかというと、ブラックジャック展に行ったという人のツイートを事前にいろいろ見たからだ。
「平気で3時間半かかる」――。
慣れた人で3時間半もかかるんなら、僕なんかもっとかかる……そう思って自分としては異例の12時予約にしたんだけど、これもまた結果的には大正解だった。
いよいよブラック・ジャック展! 東京シティビューに入場
さあ、いよいよ入場。
いろんな人が来ている。外国の方もとても多い。
会場マップ。
エントランスと第1室は撮影可。
東京タワーをはじめとする東京の絶景を望む展望フロアの窓には、事前に一般から募集し反響が大きかった名セリフが並ぶ。
とりわけこのセリフは、僕だって “名セリフ” としてしっかり覚えていたけど、この掲示の仕方には違和感あり。
この場面のセリフなんだけど、ここの “肝” は「死ね」だと思ってきたんですよ。ずっと。
まぁ、この展覧会のこの場所に「死ね」は掲示できないと思ったのかもしれないけど、「死ね」を抜いての後続のセリフじゃあ、あまり意味がない。
人間はもちろん、動物でも宇宙人でも、果ては機械でも、その生命をなんとしても救おうとしてきたブラック・ジャックが、自身の行いと対極にあるような「死ね」を言わずにいられなかったその気持ちに、僕ら読者は強く共感したはずじゃないか。
ブラック・ジャックの言う「死ね」には格別の意味がある。
それに、そこのセリフを「死ね」にした手塚治虫先生の強い意志があるはず。
「死ね」が直接的すぎると思ったら、他のセリフでいくらでも代用が利いただろうに、あえて「死ね」にした――。
それほど重く意味のある「死ね」をオミットして後続のセリフでやり過ごそうだなんて、甘い! ヌルい! もっと言えば冒涜だ!(あくまで僕の思いです)
――なんてことを、入場するやいなや思ってしまったので、ややテンションがアッチョンブリケ。
絶景を見渡して気を取り直す。
東京タワーとスカイツリーがいっぺんに見られるのは、なんだかとても得した気分。
ブラック・ジャック邸を再現したフォトスポット。
特に外国の方々が積極的に写真を撮っていた。
手術室を再現したフォトスポット。
ブラック・ジャックに痔の手術をお願いしてる人がいた。
たぶん、痔は特に高額だと思う。
赤ん坊くらいに小っちゃくなって最期を迎えるのが、かなりショックだった。
助かってほしかったなぁ。
キャストたちと一緒に撮れるフォトスポット。
第1室の最後には、当時の手塚治虫の机が再現されていた。
机上にはブラック・ジャックの連載が始まった当時の新聞・雑誌なども。
ブラック・ジャックの
「いこう 患者が待ってるぞ」
の言葉に誘導されて、第2室へと進む。
ここから先は膨大な数の原画の海に飛び込むことになるのだ。
泳いでも泳いでも泳ぎきれない海。
溺れそうで苦しいくらいだけど、幸せにひたれる海。
先ほどのブラック・ジャックの「いこう 患者が待ってるぞ」の「患者」とは、溺れかけた僕のことだったのかもしれない……と、あとで思った。都合のいいように思った。
第4室を出たところにブラック・ジャックへのメッセージを付箋に書いて貼り付けるメッセージボードがあった。
ここまで来て何も残さないで帰るのもブラック・ジャックに失礼かと思い、僕もド下手な絵を描いて貼り付けた。
百歩譲って “ド下手” は大目に見るとしても、「ギロッポン」は無いと思う。
いくら久しぶりの六本木、初めての六本木ヒルズで舞い上がっているとしても、「ギロッポン」は無い。
何も残さないで帰ったほうが失礼が無かったような気がしている。今ごろになって。
それにしても僕以外のみんな、絵がお上手でビックリこいてしまう。
帰り際にサッと描いてこのクオリティじゃ、僕みたいなギロッポン派は
「描いてもいいが、描いた付箋は持ち帰れ」
と言われてるようなものだ。
間久部緑郎に促されるようにして展示室をあとにした。
入場時に見た景色は、すっかり夜景になっていた。
そんなに居たのか!
思わずスマホの写真のExif情報を見返してしまった。
入場してすぐ撮ったエントランスの写真の時刻が11:59 いま撮った夜景が18:29
はかったように6時間半ぴったりだった。
こんなに長く1つの展覧会会場に滞在したことなんて初めて。
しかも初めて来たギロッポンヒルズでだ。
そんなにいいんなら、ギロッポンヒルズの子になっちゃいなさい! って言われそう。
喜んでなりますけど!
とにかく、ここまで魅了してくれるブラック・ジャックは偉大だ。
エントランスに戻ってみた。 夜景となった背景も味わい深い。
夜のフォトスポット。
最後に、特設ショップ「崖の上の一軒家」に寄ってみたけど、好みのものは無かったし、強いて欲しいと思うものはすべて売り切れていた。
カミカイ(神回)
第4室の最後のコーナーに、「カミカイ(神回)」の展示がありました。
展示されていたエピソードは――
以上の3つ。
誰が選んだのか、一般投票でもしたのか、あとで調べてみたけど分かりませんでした。
もちろん、この3話が “神回” であることにはまったく異存などありません。
というか、ブラック・ジャックはすべての話が神回と言えます。
あの読み応え、あの読後感には毎回心揺さぶられました。
もっとも、個人的に好きではない話はあります。
たとえば『人生という名のSL』とか『人間鳥』なんかは好きじゃないです。
そこはそれ。好みは人それぞれですな。
◆
10年前、ブラックジャック誕生40周年のアニバーサリーとして、
「みんなで選ぶ『ブラック・ジャック』ベストセレクション、読者の投票でベスト40作品を決定して単行本化します!」
という企画が秋田書店で行われました。
ブラックジャック誕生40周年のアニバーサリー 読者投票での上位3つ
この企画での1位~3位の順位は次のとおり。
読者投票の上位3つがこの結果。
じゃあ今回展示の神回3つは一体何を基準に選んでいるのか……
今もって分からない……。
もしかしたら会場に書いてあったのかもしれません。
6時間半も居ておいて僕が見落としただけかもしれません。
ご存知の方がいらっしゃいましたら、そっとささやくように教えてください。
僕が「カミカイ(神回)」に加えてほしかった作品3つ
勝手を申しまして恐縮なんですが、僕が「カミカイ(神回)」コーナーにぜひとも加えてほしいと思ったのが、以下の3作品です。
ちなみに、上記の40周年読者投票での順位は、
6位 「おばあちゃん」
7位 「シャチの詩」
37位「上と下」 となっておりました。
いや、「上と下」はもっと上位でいいはずなのになぁ……。
これもまた、好みは人それぞれ、ですな。
余談ですが……
これらの話に登場する “老婆” が、還暦(60歳)だということに驚きました。
昔の60歳って、こんなに老けてましたっけ?
今の80歳のおばあちゃんたちでもここまでの人はあまりいないですね。
50年前の60歳って、今で言う90歳くらい?
人生、長くなったものです。
人生は長くなったけど、若さが一瞬なのは変わらないな
プロフィール
館長と申します。
ホッピーを飲みながら猫をモフっているときが至福の時だと思いますがそういう状況になったことがありません。世知辛い世の中ですね。
こまかい話は下記に。
自己紹介
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